第31話 また二ヶ月後に ― Come Again After Two Months
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その日の夜、は数ヶ月ぶりに熟睡した。朝になるまでずっと起きていたことや、試験疲れも相まってか、夢を見る暇もないほど深い眠りだった。ようやく眠りから覚めて時計を見ると、既にお昼を
過ぎてしまっていたため、は目を丸くした。ここまで寝坊したのは、きっと初めてだ。 前の日の夜からずっと何も食べていない。今まで眠っていたとはいえ、こんなに時間が過ぎればさすがにお腹がすく。しかし、この時間だと既に昼食は終わってしまっているだろう。夕食が出るまで食事は待たなければいけないことを考えると、自然との気持ちは落胆した。 談話室に生徒はほとんど残っておらず、壁際でカードゲームをしている三人組と、暖炉のそばでまったりと雑談をしている二人組以外、外に出てしまっているようだった。はそのうちの、暖炉のそばに座っている二人組の方へと近づいた。二人組とは、ハーマイオニーとロンのことだった。 「あら、お早いお目覚めだこと。それに、素敵な髪型ね」 ハーマイオニーがわざと気取った声を出すのがおかしくて、は寝癖を整えながらくすくすと笑った。 「ハーマイオニー、おはよう。それからロン、体調は大丈夫なの?」 が聞くと、ロンは自信満々に胸を張った。 「完全復活だよ、君のおかげでね。頭だってちっとも痛くないし――いてて」 ロンは自分で自分の頭を軽く殴って見せたが、すぐに痛がったので、逆にとハーマイオニーの笑いを買うことになった。 「もう、強がらなくたっていいのに」 が言った。 「そうだぜ、ロン。ただでさえひ弱な脳みそを自分で壊す真似はやめろよ」 よく聞き慣れた軽口が背後から聞こえて、三人は振り返った。フレッドとジョージが、たくさんの物が積まれたトレイを運びながら、談話室の入り口をくぐり抜けてくるところだった。 「おはよう、。よく眠れたかい?」 フレッドが言った。 「おはよう。うん、おかげで疲れも取れたよ」 が言った。フレッドやジョージと普通の挨拶を交わせるようになったことが、とても嬉しかった。 「そりゃよかった。じゃあ、腹もすいただろ」 ジョージが、トレイをテーブルのに置きながら言った。トレイの上には、おいしそうなケーキや果物が、たくさん積んであった。 「それ、どうしたの?」 はトレイを指差して聞いた。空腹だったので、余計においしそうに見えて仕方がない。 「君がそろそろ起きる頃だと思ったから、少しばかり拝借してきたのさ。食べるだろ?」 「食べたい!」 が目を輝かせて頷くと、ジョージは満足そうに、食べ物をテーブルの上に広げ始めた。 「じゃあ、みんなで分けながら食べようぜ――ってロン、どこに行くんだ?」 突然ロンが立ちあがったので、他の四人が全員ロンを見た。 「少し用事を思い出したんだ。僕の分はいらないから、みんなで食べててよ」 ロンは意味ありげな笑みを浮かべて、談話室から去って行った。 「まったくあいつは仕方がないな、せっかく君たちを労おうと思って取ってきたごちそうなのに」 談話室の扉を振り返りながら、フレッドが言った。 「本当に、どうしたのかな?」 アップルパイにかじりつきながらが言った。とても美味しい。それにしても、まるでパーティの時のようなごちそうばかりが並べられている。一体フレッドとジョージがどこから調達してきたのか、食べながらも不思議で仕方がなかった。 ロンがいなくなって数分も経った頃だっただろうか、大勢のグリフィンドール生が談話室へなだれ込んできた。ひそひそ声で話をしながら談話室を横切る集団をは全く気にしていなかったが、何となく見られているような感覚がした。はそれに気付かないふりをするように努めながら、話題を切り換えた。 「そういえば、ハリーは大丈夫かな?」 「私とロンでさっき様子を見に行ってきたけど、まだ意識が戻ってないのよ。仕方がないから、蛙チョコレートを置いて帰ってきたけど」 ハーマイオニーが答えた。 その時だった。離れたテーブルでこそこそ話をしていた集団のうちの何人かが、群れながらたちのテーブルに近づいてきた。 「あの……、怪我は大丈夫?」 一人の女生徒がおそるおそるといった様子で聞いてきた。 「怪我? 私、どこも悪くないよ」 一体何の話をしているのかわからないままは答えたが、なぜか女生徒はとても驚いたようだった。 「本当に? あなたたち、賢者の石を守りに行ったのに、無傷で帰ってこれたの?」 「どうして賢者の石のことを知ってるの?」 今度はが驚いて、思わず目を丸くした。 「だって、さっき大広間で噂を聞いたもの。ねぇ、四階の廊下の先はどうなっていたの? 敵とどんな風に戦ったの?」 別の女生徒がきゃあきゃあと興奮した様子で聞こうとするので、は戸惑った。集団の中には以前図書館でたちの文句を言っていた女生徒もいたので、余計にわけがわからなかった。 「おい、今は勘弁してやってくれないか。たちは今疲れてるんだ、久しぶりの食事時くらいゆっくりさせてくれ」 フレッドとジョージが、間に割って入ってくれた。上級生にここまで言われて逆らえるわけもなく、女生徒たちはおずおずと帰っていった。 「一体、何だったのかな?」 女生徒たちのがっかりした様子の後ろ姿を眺めながら、がつぶやいた。 「外に出てみれば嫌でもわかるけど、今のホグワーツ城はすっかりこの話でもちきりよ。私もハリーのお見舞いに行ったとき、何回か呼びとめられたわ」 ハーマイオニーは特に驚いた様子もなく、ショートケーキの一かけらを口に放り込んだ。どうやらすっかり慣れてしまったらしい。 「廊下で誰かとすれ違えばすぐ質問攻めよ。面倒だったら、今日のうちは外に出ない方が賢明だと思うわ」 再び視線を感じたので、は顔を上げた。壁際でカードゲームをしていた三人組が、のことをじっと見つめていたのだ。三人組はと目が合うと、視線を逸らすようにカードゲームに熱中しているふりをし始めた。 「だけど、どうして昨日のことがもう広まってるの? 私たちが寮に戻って来てからまだ半日も経っていないのに」 「さあね」 フレッドがあまりにもそっけない口ぶりで言った。 「誰が言いふらしたかなんて、さっぱり見当もつかないよ。とにかく、陰口を叩かれなくなってよかったじゃないか」 ジョージが全く気にしていない様子で言った。 「うーん、それはその通りなんだけど……」 はどうにも腑に落ちなかった。 「!」 突然大声で名前を叫ばれたので、は椅子から思い切り飛び上がった。とても久しぶりに聞いた声だったので、一瞬、誰に呼ばれたのかさえわからなかった。 「監督生様、大遅刻じゃないか。ひょっとして、失くしたPバッジでも探してたのかい?」 フレッドがいつもの軽い調子で言った。 「お前たちは黙ってろ」 談話室の入り口をまたいで、眉間に皺を寄せたパーシーが大股で近づいてきた。は以前、減点のことでパーシーに怒られたことを思い出した。真夜中に四階の廊下に足を踏み入れたことをパーシーも知っていたとしたら……まさか、今度こそ本当に嫌われてしまったのだろうか? パーシーが手を上げた。は殴られるのではないかと思って、咄嗟に目を閉じた―― 「、大丈夫かい?」 急に肩が暖かくなり、は目を開けた。パーシーの上げられた両手は、いつの間にかの両肩を包み込んでいた。心配そうにを見下ろすその表情は、怒りとは全く真逆のものだった。 「ロンから全部聞いたよ。四階の廊下に行くなんて、なんて危ないことを! 怪我はしてないのかい? 君の身に何かあったら、両親がどんなに心配するか――」 「パーシー、怒ってないの?」 は声が震えた。パーシーが、自分の目を見て話してくれていることが信じられなかった。 「どうして僕が怒るんだい? 君はただ、自分の力で賢者の石を守ろうとしただけじゃないか」 パーシーの声がとても優しかった。 「私、パーシーにずっと謝りたかったの……。減点のこと、本当に、本当にごめんなさい」 言いたくてもずっと言えなかった言葉だった。話しながら、は自分の目から涙が溢れるのを感じた。パーシーは、の涙を見て焦ったようだった。 「謝らなければいけないのは僕の方だ。あの夜も、賢者の石について調べてただけだったんだろう? それなのに、失望したなんてひどいことを言って……。君たちが隠してること、僕が気付いてあげられたらよかったのに」 「えっ?」 全く身に覚えのない話に、の涙が止まった。あの夜天文台の塔に昇ったのは、ノーバートをチャーリーに引き渡すためだったからに他ならない。どうしてパーシーはそんなでたらめの話を信じているのだろう? 疑問に思っていると、いつの間にかパーシーの後ろに立っていたロンが、ににやりと笑いかけた。 「えっ、そうだったのか?」 何も知らないフレッドとジョージが驚いた。 「そうなんだよ、僕はあの時怪我して行けなかったけど、本当ならあそこで一緒に減点されてるはずだったんだから」 ロンが得意げに言った。ハーマイオニーは、信じられないと言わんばかりに目をひんむいた。 「一年生四人だけで乗り込んだのにほとんど無傷だなんて、本当に運がよかった。次からは危ないことを見つけたら、すぐ僕に知らせるんだよ。監督生なら、君たちの力になれるはずだからね」 ロンの素振りに気付く様子もなく、パーシーはとハーマイオニーに向かって言った。 「、ハーマイオニー、気をつけろよ。こいつは君たちの手柄を横取りするつもりでこんなことを言ってるんだ」 フレッドがわざとらしく声を低めて言った。 「だから、余計なことを言うな!」 パーシーが怒ると、ロンとハーマイオニーがくすくすと笑い始めた。もおかしくて笑った。嘘はよくないかもしれないけど、ロンのおかげで助かったことには感謝した。 ゆっくり、ゆっくりと、元の日常に戻り始めていた。生徒と顔を合わせるたびに質問攻めに遭うのには困ったが、別の言い方をすればみんながと話したいと思ってくれているのだと考えると、悪い気持ちではなかった。ルームメイトのパーバティ・パチルや、ラベンダー・ブラウンも、以前のように親しく話しかけてくれるようになった。何よりも、ウィーズリー兄弟のみんなと仲直りできたことが嬉しかった。全てが元通りに戻っていく中、ひとつだけ足りないものがあった――ハリーだ。 その日の夜、夕食の時間の前に、はロン、ハーマイオニー、フレッド、ジョージを連れて病棟へハリーの様子を見に行った。ハリーは、最後にがその姿を見たときと変わらず眠っていたし、顔色もあまり良さそうではなかった。 「このまま目が覚めないとなると、明日のレイブンクロー戦で、グリフィンドールチームはシーカー無しで出場することになりそうだな」 ジョージの言葉に、ははっとした。クィディッチカップの決勝戦が最後に控えていたことを、すっかり忘れていた。 「ハッフルパフならともかく、相手がレイブンクローじゃあなあ……。明日の試合は負けに行くようなものだぜ、スニッチを掴む人間がいないんだから」 「ウッドのやつ、大泣きするんじゃないか? クィディッチ馬鹿だからな」 軽い言葉とは反対に、フレッドは真顔だった。しかし、すぐにいつもの陽気な表情に戻って、にこう言った。 「なあ、補欠で出場する気はないかい? ――なんてな、冗談だよ。訓練もしてない一年生を試合に出すほどの無茶は、さすがの俺たちだってしないさ」 「もしかしたら上級生の中から腕のいい補欠をウッドが見つけてくることだってあるかもしれない。運が良ければな……」 ジョージは窓の外をぼんやりと見つめていた。しばらくの間、五人は沈黙していたが、突然ロンが口を開いた。 「ねぇ、僕たちがさっき来た時よりも贈り物の数が増えてるんじゃない?」 そう言ってロンは、ハリーが寝ているベッドの隣にある机を指差した。机の上には大量のお菓子が積まれていて、まるでお菓子屋さんの商品棚の一つが運ばれてきたのかと思うほどだった。 「本当だわ、どうやらたくさんの人がハリーに物を贈ってるみたいね」 ハーマイオニーが感心して言った。どことなくその顔は嬉しそうだった。 「あれっ、おかしいぞ。俺たちがハリーに贈った物が見当たらない」 フレッドがお菓子の山の周りをうろうろと探しまわりながら言った。 「まさか、マダム・ポンフリーが捨てたんじゃないだろうな?」 フレッドとジョージはそう言い捨てると、他の生徒の看病で忙しくしているマダム・ポンフリーのところまで一斉に駆け出した。遠くからマダム・ポンフリーがフレッドとジョージを怒鳴りつける声が聞こえてきた。 「置けるわけがないでしょう、あんな不衛生な物!」 結局、シーカーの補欠ができる人間は見つからず、次の日の試合はあっけなく終わってしまった。レイブンクローのクィディッチチームは、スリザリンやハッフルパフとは比べ物にならないほど強かった。それでも、ハリーがいれば負けることはなかったはずだ。もしハリーが出場していたら……。きっと誰もがそう考えただろう。しかし、そんなことは誰一人として口にしなかった。 「俺たちはやれるだけのことはやった。落ち込むなよ、来年は必ず勝つさ……」 とロン、ハーマイオニーがグリフィンドールチームの控え室に立ち寄った時、オリバー・ウッドが選手にこう言うのが聞こえた。 控室の入り口のカーテンの隙間から室内を覗き込んだ。まるで葬式が行われているかのように静かで、暗かった。ウッドは壁を向いてうつむいていたし、フレッドとジョージは呆然と空を見つめていた。ケイティ・ベルがすすり泣く声と、それをアンジェリーナ・ジョンソンや、アリシア・スピネットが慰めている声以外、何も聞こえなかった。 たちは彼らに何も言うことができず、黙ってその場を立ち去った。フレッドとジョージのあんな姿を、は見たことがなかった。もしも、が事前に訓練を受けていたとしたら、少しでも彼らの役に立てたのだろうか? が眠りにつくその瞬間までずっと、あの控え室で見た光景が脳裏に焼き付いて離れなかった。 ハリーが目を覚ましたという知らせを聞いたのは、翌日の昼食時だった。マクゴナガル教授がたちの座っている席までやってきて教えてくれた。たち三人は大急ぎで大広間を出て、病棟へと走って向かった。 たちは一秒でも早くハリーに会いたい気持ちでいっぱいだったが、マダム・ポンフリーはなかなか許してくれなかった。さっきダンブルドアと話を終えたばかりだから、あまり連続で人に会うとハリーの体調が崩れてしまうと言い張るのだ。しばらく入り口で交渉を続けていると、病棟の奥からハリーがマダム・ポンフリーを呼ぶ声が聞こえてきた。マダム・ポンフリーは一旦その場を離れたが、しばらくするとたちのところへ戻ってきた。恐らくハリーが説得してくれたのだろう。マダム・ポンフリーは、五分だけなら構わない、とたちを渋々中へ入れてくれた。 「ハリー!」 ハリーの姿を見るなり、ハーマイオニーが大声で言った。ハリーはまだベッドの上に横になっていたが、三日前に入院した時と比べるとずいぶん体の調子が戻って来ているようだった。 「ハリー、無事で本当によかったわ。私たち、あなたが死ぬんじゃないかって心配してたの」 ハーマイオニーが声をかけると、ハリーは苦笑いした。 「うん、ダンブルドアが教えてくれた。三日も眠ってたなんて、自分でも驚いたよ」 「君が眠っていた間、僕らのことがすっかり広まっちゃってさ。学校中がこの話でもちきりだよ」 ロンが言った。 「私たちも色んな人に聞かれたけど、正直、最後までたどり着いたわけじゃないからわからないことだらけだよ。スネイプは犯人じゃなかったみたいだし、ダンブルドアはクィレルが死んだって言うし……。ねぇ、あのあと何があったの?」 この三日間、ずっと気にかかっていたことをが尋ねると、ハリーは口を開いた。 「君たちの言っていることそのままだよ。スネイプは無実で、クィレルが犯人だ。最後の部屋で、僕はクィレルと会ったんだ」 たちは三人揃って驚きの大声を上げたが、背後からマダム・ポンフリーが叱る声が聞こえてきたので、すぐに声を落とした。 「だけど確かスネイプって、君のこと殺そうとしてたじゃないか。ほら、クィディッチの試合の時……」 ロンが言うとハリーは首を振った。 「あれは僕を助けようとしてやったことだったんだって。試合の時、僕の箒に呪いをかけていたのはクィレルで、スネイプはその反対呪文をかけてただけだったんだ。箒の呪いが解けたのは、ハーマイオニーにクィレルが体当たりされて、箒を見失ったからだったってクィレルが言ってたけど――そうなのかい?」 たちは顔を見合わせた。確かにあの時、ハーマイオニーはスネイプに火をつけに行くために、ものすごい勢いで教員のいる応援席まで駆けこんだのだった。 「次の試合でスネイプが審判を買って出たのもクィレルを見張るためだったんだ。ハロウィンの夜にトロールを忍び込ませた犯人もクィレルだ。スネイプはあいつの目的を見抜いてて、だから一人だけ四階の廊下に向かってたんだよ。スネイプが怪しい行動をしていたのはどれも、僕や賢者の石を守るために行っていたことだった。おかげでクィレルは誰にも怪しまれることなく、賢者の石を奪う準備をすることができたってわけだ――あいつの気弱な性格も、どもりも全部演技さ。僕と会った時のあいつは普通に喋っていて、それまでのクィレルとはまるで別人みたいだった」 クィレルが普通に喋っているところなど、到底想像もできない――そもそも、クィレルが犯人だということすら、にはまだ信じがたいことだった。 「ということは――じゃあ、クィレルが『例のあの人』の手下だったってこと?」 「そう。クィレルはヴォルデモートのために動いていた」 名前を聞いて、ロンが小さな悲鳴を上げた。ハーマイオニーも体を強張らせた。 「クィレルは常にあいつと一緒にいた。言葉通り、どこにいる時もだ。授業の時も、クィディッチの試合を見ていた時も、禁じられた森にいた時も――常に」 「それじゃあ、私たちはいつも『例のあの人』の近くにいたってこと? 授業中も、『あの人』がどこかに身を隠していたの?」 は身震いした。しかし、ハリーが首を横に振ったので、たちはきょとんとした目でハリーを見た。 「あいつにはそもそも隠すような体なんてないよ。僕を最初に殺そうとしたその日から、自分の体を失ってしまった。言ってみれば幽霊みたいなものというか……その、つまり……クィレルが巻いていた大きなターバンを覚えてるかい、あの中に何が入ってるかみんなずっと気になってただろ? 僕、あの中身を見たんだ。 クィレルが隠していたのは、自分の頭そのものだった。ターバンを取って、クィレルが僕に背を向けると、クィレルの後頭部があるはずの場所には、ヴォルデモートの顔があったんだ」 今度はハーマイオニーが悲鳴を上げた。 「体を失ったヴォルデモートはずっと、クィレルの体に寄生して生き延びていた。禁じられた森で、クィレルは自分の体を通してヴォルデモートにユニコーンの血を与え続けた。そうやって、『賢者の石』を手に入れる機会をずっとうかがっていたんだ」 は言葉が出なかった。自分たちの想像できる範囲を超えた恐ろしいことが、今ハリーの口から語られれていることが信じられなかった。ハリーは更に続けた。 「クリスマス休暇中、『みぞの鏡』っていう変な鏡を見つけたのを覚えてるかい? あれが、『賢者の石』の隠し場所になってたんだ。僕が鏡の前に立ったとたん、鏡の向こうの自分が真っ赤な石をポケットの中に入れた。気がついたら、僕の本物のポケットの中にその石が入っていて――僕は『賢者の石』を手に入れていたんだ。ダンブルドアが言うには、あの鏡から『石』を手に入れることができるのは『石』を見つけたい人だけで、『石』を使うことを考えてる人は決して手に入れることができないんだって。あの時僕は、クィレルより先に『石』を手に入れたいと思っていたからね。 『石』を手に入れた僕は、その場から逃げだそうとしてクィレルに捕まってしまった。首を絞められそうになったんだけど、どうやらクィレルは僕に触ると皮膚がやけどしてしまうみたいで、すごく苦しんでた。他に方法はないと思って、僕は力を振り絞ってクィレルの体にしがみついて抵抗した。だけど、クィレルの体に触れると僕の傷跡の痛みもひどくなっていって、目を開けていられないほどだった――そしてそのまま、僕は気を失った。ダンブルドアが追いついた時には、クィレルも僕の隣で死んでいたらしい。 僕の母さんは僕を守って死んだ。母さんからの僕に対する深い愛情が、目に見えない魔法の力になって、だから、ヴォルデモートに取り憑かれたクィレルは僕に触れることができなかったんだって。愛の力って、一体どうしてそうなるのかよくわからないけど、でも……」 「とっても素敵な魔法だよね」 がにっこりと微笑んで言った。ハリーもまた、笑って頷いた。 「クィレルが死んだあと、『例のあの人』はどうなったのかな」 ロンが首をかしげながら言った。 「またどこかで取りつく体を探してるんだと思う。いつか力を取り戻したら、また僕が狙われるのかもしれない――だけど僕、思うんだ。あいつの名前を怖がっても仕方がない。どんなに名前を呼ぶのを避けたって、あいつは狙った人間を許すわけじゃないんだから。それに、父さんと母さんは奴に立ち向かって死んでいったのに、僕がヴォルデモートの名前すら怖がっていたら、話にならないじゃないか」 ハリーが毅然として言った。 「あー、うん……君の言う通りかもしれないな……」 ロンはそう答えつつも、ハリーが名前を言ったことに対してびくびくしているようだった。 「賢者の石はどうするんだろう? これからもホグワーツで保管し続けるのかな」 「そのことだけど、賢者の石は壊すことになったんだって」 ハリーがあっさりと答えたので、たちは目を丸くして驚いた。 「そんな、せっかく守ったのに!」 ロンが言った。 「石がなくなるってことは……フラメルは死んじゃうの?」 が言った。 「僕もそう聞いた。だけどダンブルドアが言うには――何だったかな、充分に心の整理をした者から見れば、死は新たなる壮大な冒険のようなものなんだって」 「よくわからないなあ。私だったら、自分から死にに行くなんて怖くてできないよ」 が言った。 「僕がいつも言ってただろ、ダンブルドアは狂ってるのさ」 ロンはいたく感心したように言った。 「そういえば、透明マントの前の持ち主はダンブルドアだったよ。僕の父さんから譲り受けた物だったんだって」 ハリーが言った。はクリスマスにハリーに贈られた手紙の、あの見覚えのない細長い文字を思い出した。あれはダンブルドアの字だったのか。 「ひょっとして、ダンブルドアは最初から君を賢者の石に差し向けるつもりだったのかな? だって、こんなすごい物、規則違反に使ってくださいって言ってるようなものじゃないか」 ロンが言うと、ハーマイオニーが憤った。 「もしそのつもりだったんなら、はっきり言って最低だわ。おかげで、ハリーが殺されるところだったのよ!」 しかし、ハリーは首を横に振った。 「少し違うよ。きっと――あの人は僕にチャンスをあげたかったんだ。ダンブルドアはホグワーツで何が起ころうとしてるのかも、僕たちが何をやろうとしてるのかも知ってた。けど、それを危ないからって止めたりせずに、僕たちが立ち向かえるように手助けをしてくれただけなんだよ。その勇気があるなら、僕がヴォルデモートと戦う権利があるって考えたんだ」 「やっぱり、ダンブルドアってわけがわからないな」 ロンは誇らしげに言った。 「ハリー、明日には退院できそう? 学期末の祝宴会があるの。残念ながら、優勝はスリザリンに決まったけど――けど、きっとおいしいごちそうがたくさん食べられるよ」 が言った。 「うん、必ず行くよ」 ハリーが答えた。 次の日の夜、大広間に入ると、いつもとは違う光景がたちを出迎えた。壁には緑と銀で色づいた飾り付けが、天井からはスリザリンを表す蛇が描かれた垂れ幕が、スリザリンの七年連続の優勝を祝っていた。 「気分の悪い景色だなあ」 ロンが小声で悪態をつくので、ハーマイオニーはたしなめた。 グリフィンドール生が座っている長テーブルの真ん中あたりから、フレッドとジョージがパーシーの横で手を振っていた。席をとっておいてくれたらしい。 祝宴会の始まる時間が近づき、人が徐々に集まってきたが、ハリーはなかなかこない。ひょっとして、まだ体調が万全ではないのだろうか? がそんなことを考えていると、騒がしかった大広間が突然静かになった。ハーマイオニーに小突かれて入り口に視線を移すと、ハリーがこちらに向かって歩いて来ているところだった。テーブルのあちこちから、ハリーの姿を一目見ようと何人もの生徒が立ちあがった。ハリーはその視線を無視しながら、ロンが開けておいた席へと座った。これでようやく、四人が揃った。はその嬉しさで、小さな笑みがこぼれた。 しばらくの間ハリーは注目を浴びていたが、上座のテーブルにダンブルドアが到着したので、生徒の視線はそちらに移った。ダンブルドアはとても上機嫌な様子で、口を開いた。 「また一年が過ぎた。極上の御馳走に夢中になる前に、年寄りの無駄口に付き合ってもらうことにしよう。何という一年だっただろう。君たちの頭の中に、昨年より少しでも多く何かが詰め込まれていて欲しいものだ……。新しい一年が始まる前に、夏休みで君たちの頭は空っぽになってしまうだろう。 それではこれから、寮対抗の表彰を始めよう。得点はこのようになった。第四位はグリフィンドール、二百六十二点。第三位はハッフルパフ、三百五十二点。レイブンクロー、四百二十六点。そしてスリザリン、四百七十二点」 スリザリンのテーブルから歓声の嵐が起こった。マルフォイが自分のゴブレットで机を叩いているのが視界に入って、は気分が悪くなった。ロンもむすっとした顔で、スリザリンの生徒を見つめていた。 「うむ、スリザリン生よ、よくやった。しかし、最近の出来事も勘定に加えなくてはならない」 ダンブルドアがこう言って、大広間は静まり返った。 「えー、ここで、いくつかの追加点を与えたい。そうだな――まずは、ミスター・ロナルド・ウィーズリー」 ロンの顔は熟れたハツカダイコンのように真っ赤になった。 「ここ数年来で最も優れたチェス・ゲームを見せてくれたことを称え、グリフィンドールに五十点与える」 グリフィンドール生の歓声は、魔法がかかった天井を吹き飛ばしてしまいそうなほどだった。頭上で輝く星が、かすかに揺らめいたような気がした。少し離れた席から、パーシーが興奮しながら他の監督生に話しかけているのが聞こえた。 「僕の弟だよ! 一番下の弟が、マクゴナガルの巨大チェスを破ったんだ!」 「次に、ミス・・……」 名前を呼ばれた驚きで、は前のめりに倒れてしまうところだった。大広間が再び静かになった。 「友人を救うため、たった一人で困難を乗り越えたことを称して、グリフィンドールに五十点与える」 大広間は更に拍手喝采に包まれた。フレッドとジョージがおおはしゃぎで何度もの肩を叩いた。は嬉しいはずなのに、衝撃のあまりどんな顔をすればいいのかわからなかった。 「そして、ミス・ハーマイオニー・グレンジャー――炎を前にして、見事な推理力を発揮したことを称して、グリフィンドールに五十点」 ハーマイオニーは顔を両手で覆い隠した。きっと涙が溢れてしまったに違いない。はハーマイオニーに思い切り抱きついて喜んだ。グリフィンドール生は総立ちで飛び上がった。 「それから、ミスター・ハリー・ポッター……」 大広間は静かにダンブルドアの言葉に聞き入っていた。 「並み外れの勇敢さと、傑出した度胸を称え、グリフィンドールに六十点与える」 耳をつんざくような歓声と叫びが大広間いっぱいに湧き起こった。声を枯らしながら計算ができた人がいたなら、グリフィンドールがスリザリンと同点に並んだことがわかったはずだ。あと一点でも多くもらうことができれば、スリザリンを抜いて一位にできるのに。 ダンブルドアが手を上げ、生徒たちは徐々に静かになっていった。 「勇気にも、色々なものがある」 ダンブルドアが言った。 「敵に立ち向かうには、大層な勇気が必要だ。しかし、友人に立ち向かうにも、同じくらいの勇気を出さなければいけない。ゆえに、ミスター・ネビル・ロングボトムに十点を与える」 大広間の外に人がいたなら、中で爆発が起こったと勘違いしてしまったかもしれない。そう思うほどの大歓声で大広間はいっぱいになった。グリフィンドール生は、言葉にならない叫び声を上げ、がむしゃらに飛び上がったり、互いに抱き合ったりした。たくさんの人が、呆然としているネビルに抱きついた。ネビルがグリフィンドールのために得点をもらったのは、これが初めてだった。それを黙って眺めていたのはスリザリン生だけで、レイブンクローやハッフルパフですら、スリザリンが優勝を逃したことに喜んでいた。 「ということは、装飾を少し変えなければならないな」 そう言ってダンブルドアが手を叩くと、緑の垂れ幕はグリフィンドールの紅色に変わり、銀の飾りは金色に変化した。スリザリンの大きな蛇が消え去り、変わりにグリフィンドールのライオンが現れた。 こんなに胸が躍った、素晴らしい夜が今までにあっただろうか? グリフィンドール生は、腹に入りきらないほどの量のごちそうを全てたいらげた。この嬉しい気持ちも、この料理のおいしさも、きっと一生忘れることはないだろう。はそう思った。 試験の結果が発表されたのは、祝宴会の次の日のことだった。この数日間で色々なことがありすぎて、は試験があったことなどすっかり忘れてしまっていた。思っていたよりも成績がよかったのは、嬉しいサプライズだった。ハリーやロンも、それぞれ悪くない成績を収めた。もちろん、ハーマイオニーは学年最優秀の結果を残した。ネビルは魔法薬学が悲惨だった代わりに、薬草学の成績が良かったので、ぎりぎりで合格した。 あっという間に洋服箪笥は空になり、トランクいっぱいに荷物が詰め込まれた。寝室の中は、初めて来た時と全く同じように、空っぽの部屋になった。 生徒たちに注意事項の紙が配られた。休暇中に魔法を使うことのないように、という内容だった。 「こんな紙、渡すのを忘れてしまえばいいのにって毎年思うんだ」 紙を眺めながら、フレッドが悲しそうに言った。 長い長い廊下を渡り歩いて、生徒たちは次々に城の外へと出て行った。その波に加わって、たちはトランクを引きずりながら歩いていた。すると、途中の分かれ道の先に、スネイプが一人で歩いている後ろ姿が見えた。ハリーも気がついたらしく、ぴたりと足を止めてスネイプを眺めていた。気がつくとはトランクを置いて、その後ろ姿に向かって走り出していた。スネイプに一つだけ、言いたい言葉があったのだ。 「スネイプ教授!」 の呼びかける声に、スネイプは振り向いてから怪訝な顔をしたが、いつものように冷静な声で答えた。 「ミス・、何の用だ?」 「教授にお礼が言いたくて!」 「お礼?」 スネイプの眉がぴくりと動いた。後ろから、ハーマイオニーとロンがどうしたものかと追いかけてきた。 「はい、ハリーを助けてくれたことにです。私、スネイプ教授のこと怖い人だと思ってたんです。でも、違いました。本当はハリーのことをずっと心配してくれていたんですよね、ありがとうございます!」 は満面の笑みでそう言った。しかし、何故だかスネイプの顔は正反対にどんどん不機嫌になっていくようだった。おかしい。自分はお礼を言ったはずなのに。 「祝宴会が終わったあとでよかったな、ミス・。でなければグリフィンドールは、優勝が不可能になるほどの点を減らされることになっていただろう」 表情からも声からも、抑えきれない怒りがあふれ出ていた。それが一体何故なのか考える前に、はハーマイオニーとロンによって元の廊下に引き戻されていた。 「、あなた何言ってるのよ!」 ハーマイオニーが慌てた様子で言った。 「だって、本当のことを言っただけだよ!」 は反論した。すると、ハリーが苦笑いで答えた。 「違うよ、スネイプは今でも僕のことなんか大嫌いだし、間違っても心配なんてしてない。僕を助けたのは、僕の父さんからの借りを返すためだったんだ」 「ハリーのお父さんが?」 は聞いた。 「そう。スネイプは父さんに命を助けられたんだ。それが本当に屈辱だったから、何がなんでも借りを返したかったんだって。二人は互いに嫌いあっていたんだ」 ハリーが答えた。 「ふーん……複雑な事情があるのね」 はため息をついた。 「きっと、次の年には何事もなかったかのように、僕をいじめ抜くはずだ」 ハリーが言った。 「だから、頼むからスネイプを刺激するようなことだけはするなよ」 ロンが言った。 城を出た生徒たちはハグリッドが率いる船団に乗って湖を渡った。森を抜け、駅に着き、ホグワーツ特急に乗り込んだ。車窓からはみるみるうちにホグワーツ城が見えなくなった。百味ビーンズや蛙チョコレートを食べ、笑ったり喋ったりしているうちに、景色はどんどんと変化してキングズ・クロス駅へと近づいていた。ローブを脱ぎ、私服に着替え、ホグワーツの生徒で埋め尽くされた九と四分の三番線に降り立った。一年ぶりに見た景色だった。 改札口から大勢の人間が出てくることでマグルを驚かせないため、老人の監視員が仕切る中、二人ずつ生徒は柵の外へ出された。 「夏休みにうちに泊まりに来てくれよ。それから、ふくろう便も送るよ」 ロンが言った。 「ありがとう。その楽しみがあればこの夏を乗り切れそうだ」 ハリーが嬉しそうに言った。 「じゃあね、ハリー!」 「またな、ポッター!」 目の前を通り過ぎながら、何人かがハリーに声をかけた。 「相変わらず人気者だね」 ロンがにかっと笑った。 「これから行く場所では違うって、断言できるよ」 ハリーが遠くを見つめながら言った。 改札口を出て、マグルがいっぱいの駅のホームへと四人は出た。久々に見かけたマグルの姿を眺めながら、は不思議な心地がした。一年前は、魔法使いの姿の方が珍しかったはずなのに。 「!」 甲高い声が聞こえてが振り返ると、勢いよく抱きしめられて、の視界は真っ赤な髪の毛で覆われてしまった。 「よかった、本当に……無事だったのね」 「無事だなんて、大げさよ」 ジニーの頭をなでながら、が言った。 「だって、すごく心配したのよ――あっ!」 ジニーは抱きついたまま、の背後の誰かを興奮したように指差した。しかし、それはロンではなかった。 「ハリー・ポッターよ、ハリー・ポッターがいるわ! 、本当に友達だったのね!」 「嘘なんてつくわけないじゃない」 がくすくすと笑った。 「ジニー、静かに。指をさすのは失礼よ」 懐かしい声が聞こえて、モリーおばさんが現れた。先に帰って来ていたフレッドとジョージが、にやにや笑顔で後ろに立っていた。 「お熱い再会だね」 ジョージがからかうように言った。 「みんな、ホグワーツは楽しかったかしら?」 モリーおばさんがたちに暖かい笑顔を向けながら言った。 「はい、とっても」 も笑顔で返した。 「セーターとお菓子をありがとうございました」 ハリーが言った。 「あら、そんなに大したことじゃないわよ」 おばさんはお礼を言われて嬉しそうだった。 「小僧、準備はいいか?」 不機嫌な声が聞こえてきて、みんなは振り返った。でっぷりと太った、立派な口髭を持つ中年男性が、怒ったように顔を真っ赤にしてこちらを見ていた。その後ろにはほっそりとした女性と、男性と同じくらい太った体系の男の子が震えながらこちらをの様子をうかがっていた。の全く知らない人たちだ。誰だろう? 「わかりました、おじさん」 ハリーは突然、真顔になって答えた。 「あら、ハリーのご家族ですか?」 モリーおばさんが聞いた。 「ある意味ではそうだ」 中年男性はむっつりと答えた。 「おい小僧、早くしろ。お前のために一日を無駄にするわけにはいかん」 男性はくるりと向きを変えて歩き始めた。もロンもハーマイオニーも、目を丸くした。こんな人が、ハリーの家族だって? 「それじゃあ、また夏にね」 ハリーは残念そうに言った。 「楽しい夏休みを――に、なればいいんだけど」 ハーマイオニーがかける言葉に困りながら言った。 「うん、そうなるよ」 ハリーが笑ったので、三人は驚いた。 「家で魔法を使っちゃいけないこと、あいつらは知らないんだ。だから僕、今年の夏はあいつらと楽しく過ごせるはずだ」 ハリーはたちに背を向けて、ゆっくりと歩き始めた。残った三人はそれを呆然と眺めていたが、しばらくしてハーマイオニーが姿勢を正した。 「それじゃあ、私も帰るわ。また夏にね!」 そして、その場にはウィーズリー一家とだけが残った。モリーおばさんがにっこりと、子供たちに言った。 「さあ、私たちも行くわよ。駐車場でお父さんが待っているわ」 ウィーズリー兄弟とは、モリーおばさんのあとに続いて歩き始めた。駅の外に出ると、遠くの方にトルコ石色のフォード・アングリアが止まっているのが見えた。あともう少しだ。 今年もまた、にぎやかで楽しい夏がやってくる。の顔は晴れやかだった。 |
(2012/03/09) <back|top|next> |
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